公演レポート:ミュージカル『ボディガード』

May J. 圧巻の歌唱力でホイットニーの名作を熱演

By: Apr. 09, 2024
公演レポート:ミュージカル『ボディガード』
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ミュージカル『ボディガード』ケビン·コスナーホイットニー·ヒューストン主演の世界的大ヒット映画『ボディガード』を舞台化。映画でホイットニーが演じたシンガー、レイチェル役を紅白歌合戦にも出場したMay J.新妻聖子とWキャストで演じる。グラミー賞受賞曲『I Will Always Love You』をはじめ、映画でもお馴染みの『I Wanna Dance with Somebody』などヒットソングの数々も披露。レイチェルを守るボディガード役には、確かな演技力で映画やドラマで活躍中の大谷亮平が出演し、誰もが知る名曲に彩られた壮大なロマンティック·サスペンス·ミュージカル。本編後には、キャスト全員とお客様が一体となって盛り上がれるショータイムも。

オスカー賞を目指すスーパースター、レイチェル(May J.)。息子と姉のニッキー(AKANE LIV)と暮らす彼女の周辺には、ストーカー(大久保祥太郎)の影が潜んでいた。ボディガードのフランクがレイチェルの警護に当たることとなるが、自由を束縛されたレイチェルの反発にあう。とある晩、フランクの忠告を聞かずに出たライブで窮地を救われたレイチェルは、彼に深い感謝と信頼を覚えた。フランクとの距離を縮めようとするレイチェル。依頼人を守る使命を優先し、距離を置こうとするフランク。すれ違う二人の間に亀裂が生じ、危険はさらに近く忍び寄る…。

暗転し、一発の銃声が鳴り響く。暗闇のスポットライトの下、撃ったのはフランクだった。彼の過去を描写する衝撃の幕開けに、響めく客席。

公演レポート:ミュージカル『ボディガード』

一転し、ダンサーを引き連れ登場したMay J.演じるレイチェル。ミリタリー風のステージ衣装に身を包み『QUEEN OF THE NIGHT(夜の女王)』を歌い上げる。がなり声も駆使し歌い踊るその登場は、スーパースターに相応しい。続けてカラフルでスポーティーなダンサーとのラインダンスを交え、『HOW WILL I KNOW(恋は手さぐり)』を披露するレイチェル。そこへフランクが訪れ、二人は出会う。

未だフランクに心を許さないレイチェルは独りスポットのライトの下、『GREATEST LOVE OF ALL(グレイテスト・ラヴ)』を孤独にピアノで弾き語る。力強くも美しいそのパフォーマンスには、スターとしての宿命や決意が溢れていた。

公演レポート:ミュージカル『ボディガード』

ある晩、レイチェルはストーカーの危険性を懸念するフランクを押し切り、『I WANNA DANCE WITH SOMEBODY(すてきなSomebody)』をステージで熱唱。突如暗転し、心音に合わせスローモーションの様にゆっくりとレイチェルに接近していくストーカー。緊迫感溢れる演出に会場に緊張が走る。明転し、何も気付かずに歌い踊るレイチェル。再び暗転し更に接近するストーカーは、ついにステージへ上のレイチェルに襲いかかる。人混みを掻き分けレイチェルに駆け寄り、彼女を抱きかかえ守るフランク。『ボディガード』の代表的なシーンが照明・音響を駆使し、巧みに再現されていた。

フランクに心を開き始めたレイチェルは、『RUN TO YOU』で彼への想いを歌う。May J.の美しく伸びやかな高音に鳥肌が立った。同じく彼を想うニッキーの歌声からは、切なさが溢れている。

バーでのデートシーンではレイチェルがフランクを見つめ語りかけるように、ゼロ距離で『I HAVE NOTHING』を歌唱。次第にバーのセットは消え、二人きりの世界が描かれる。大サビでは手持ちマイクに切り替え、客席に歌を届ける。名曲をしっかりと聞かせてくれる演出で、期待を裏切らない。

リスクを承知の上で、フランクが守ってくれることを信じアカデミー賞授賞式に出席するレイチェル。ステージ奥の幕が上がると、生演奏をしているオーストラが剥き出しになった。最高峰の舞台に相応しいセットで、シルバーのドレスに身を包み『ONE MOMENT IN TIME』を歌い上げる姿は圧巻。会場の全ての視線がMay J.に集中する。力強い歌唱がレイチェルの屈しない強さを象徴していた。あまりの迫力に釘付けになり、鳥肌が止まらない。

そんな彼女を狙う銃の赤いレーザー。客席に現れたセキュリティスタッフに紛れ、レイチェルを狙うストーカー。レイチェルを庇い撃たれるも、犯人を見抜き撃ち返すフランク。息を呑む迫真のクライマックスは、見どころがあり過ぎて目が足りない。

後日、互いのために別々の道を歩むことにした二人。キスを交わし、「さよなら、フランク·ファーマー。」と別れを告げるレイチェルの姿は、アカペラで歌い始めた『I WILL ALWAYS LOVE YOU(オールウェイズ・ラヴ・ユー)』の詞のまま。派手な舞台衣装とは異なる私服風の衣装から、レイチェルのフランクを想う本当の気持ちが感じ取られる。「運命の人じゃなかった。」切ない日本語詞が胸に刺さり、気づくと涙目になっていた。

公演レポート:ミュージカル『ボディガード』

カーテンコールはショータイムとし、『I WANNA DANCE WITH SOMEBODY(すてきなSomebody)』をオールキャストで披露。カラフルな照明、観客のペンライトと手拍子で会場は笑顔に包まれる。手を繋ぎにこやかに退場していったMay J.と大谷が、レイチェルとフランクが離れていても互いを想う姿を表していた。

圧倒的な歌唱やオーケストラの生演奏にうっとりとする反面、忍び寄るストーカーがもたらすスリリングなシーンに溢れる緊張感。ラブストーリーとサスペンスのメリハリが素晴らしい。また、高身長で低音ボイスな大谷の渋さが役に良く合う。ホイットニーファンはもちろん、原作ファン必見のミュージカル『ボディガード』。パフォーマンス力の高さからも、再演を熱望する作品となった。

[撮影:岡千里]


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